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見えない海で星を探すくじらの詩集です。
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はじまりは2011年6月11日。
東日本大震災から3ヶ月が経った日の夜でした。
なにものにも向けられない悲しみや憤りの渦や、名前のつけられない感情を感じ、手の届かない大きなものに思いを託したかったのかもしれません。
詩を書きました。
祈る意識の先に自然と存在したのは、くじらでした。
私がおはなしを本に仕立てる創作活動を始めたきっかけが、2011年の震災でした。
職場に泊まり込み、同僚の気配を感じながら、眠れない仮眠の夜に、失われてしまった顔も知らないたくさんの人々のことを思いました。
生きている、と、死ぬ、の境い目や、状態のちがいについて考えました。
続いてゆくはずだった日常なんて、まるで膜一枚、一瞬でめくれあがり、くだけた世界があらわになります。
変わらなきゃ。
ほんとうに生きなきゃならない。
そういう思いが湧きました。
心からしたいことをする。
あきらめた夢、おはなしを書いて、本にしたてて表現する。
拙くても、とにかく、チャレンジする。
それから毎年3/11に、2023年まで、詩を書き、Twitter(現X)に投稿しました。
なにかしらを感じてくださる方がいてくれて、そこで私もまた振動するなにかを感じていました。
『三月のくじら』は、私にとって、大きな存在へ向ける祈りであり、創作を介したつながりへの感謝であり、今の始まりを意識させる錨です。
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いつかまとめたいと思いながら、区切りのタイミングを逃していましたが、今回、思いつきで蝋引きした紙の濃い青に、深い海やくじらを想起し、本に仕立てるにいたりました。
以前から、本をつくり、出す時には、ガラス壜に手紙を封じて海へ託す感覚でいます。
受け取るひとはいないかもしれない。ずっと波間を漂うか、砂浜に貝と一緒に埋まるか。
でも、いつもどなたかが拾ってくれて、わたしの創作をここまでつないでくださいました。ありがたい、不思議なご縁だなあと思います。
この『三月のくじら』も、無意識の海の向こう、どこかの浜辺で、必要な方に届きますように。
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[造本]
蝋引きした紙を表紙に使い、フランス装としました。
サイズ:横60×縦81×幅7 mm
本文:48ページ
一部内容を改訂して収録
[材料]
紙 蝋 麻糸、ビーズ
[印刷]
インクジェットプリンター
[発行]
2025年3月11日
[購入の際の注意点]
•1点ずつ手づくり品であり、蝋引きの風合いなど、品物によって異なります。
•見返しの紙は数種あり、お任せでお届けとなります。
•モニター環境により、画像と実物の色味が異なる場合があります。
•猫の暮らす環境で制作しています。毛の混入などないよう気をつけておりますが、アレルギーをお持ちの方はご留意ください。